No.14 特集「グリーンツーリズム」

ボランティア活動の多様化―防災・環境問題への広がり

 戸田市ボランティア・市民活動支援センター開設から早くも3ヶ月が経ちました。このセンターは戸田市と社会福祉協議会と市民団体の三者の協働運営となっています。社会福祉協議会は川岸の青少年会館に独自に「ボランティアセンター」を持っていましたが、これはそもそも50年代後半から全国に福祉を目的としたボランティアセンターがつくられてきた流れを受けたものだったのではないかと思います。日本でのボランティア活動の歴史は、救世軍の社会鍋や革新や左翼運動の流れがありますが、宗教や思想的な活動だけでなく、戦災孤児支援活動やセツルメント活動、震災・台風などの災害支援活動、保健衛生活動としてボランティアがこの50年代にはすでに活躍していたようです。しかし、この時代のボランティアはまだまだ「一部の人が福祉のことなどを行う特別なこと」のようにとらえられていたようです。
それが大きく変わったのは、阪神・淡路大震災のあった1995年というのが定説です。この年は「ボランティア元年」と呼ばれており、以降、ボランティアが全国的に活発化してきたと言われています。阪神・淡路大震災をきっかけに市民の相互扶助意識が広がり、最近ではボランティアは「一部の人が行う特別なこと」ではなくなってきました。同時にその後は、ボランティアが従来の福祉分野だけではなく、多様な分野で広がりをもち、特に、防災活動や環境活動のボランティアは全国的にも活動が盛んになってきています。また、企業の社会的責任や市民活動、サークル活動などとも融合して、細分化専門化し、コミュニティビジネスやNPO活動など、行政に代わる介護支援など実に広範囲な様相を示しています。だから戸田市でも「ボランティア・市民活動」という名称で行政の縦割りの弊害をなくし、市民的な視点からボーダレスな運営を考えようと取り組んでいます。実際、サイトを見ても17以上のジャンルに分けられていますね。

グリーンツーリズム


 ところで皆さんは「グリーンツーリズム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
 テレビの「鉄腕ダッシュ村」とかいう人気グループが農作業をするものや最近では国会議員が議員連盟を作ったりと話題を呼んでいますが、いわゆる都会と農村を交流しよう、その中でコミュニティを再生し、食育・教育、防災や環境問題を考えようという動きです。この動きはボランティア活動が細分化された弱点を、地域間交流のコミュニケーションの中で多様性を「グリーンライフ」というひとつの生き方としてネットワークしてまとめるというメリットがあります。
 去る9月16日、東京・青山の地球環境パートナーシッププラザで特定非営利活動法人埼玉ツーリズム協議会主催の「グリーンライフカフェ 第2回 ボランティアでホリデーしよう!」(共催:ボランティアホリデー運営事務局)が埼玉県などの後援で開かれました。これは埼玉県を中心にグリーンライフやグリーンツーリズムを提案している同協議会が「都市農山村交流」についていろいろな提案をしていく「交流会カフェ」という拠点を作り、今回は、農業や環境のボランティアを行うグリーンボランティアやボランティアホリデーという新しいボランティアの仕組みやグリーンツーリズムの事例紹介、ボランティア情報についてなどの提案をしようという企画でした。来賓挨拶として埼玉県農林部農山村魅力づくり室の石井順子氏より、埼玉県のグリーンツーリズム施策や農村都市交流などについて述べられ、同協議会よりグリーンツーリズムプロジェクトやグリーンボランティアなどが語られましたが、またボランティアホリデーは、2004年に国土交通省と総務省より企画・試験実施された交流人口拡大の仕組みで「都市部の方がボランティア活動への参加をしながら地方に滞在するという新しい都市と地方の交流のカタチ」(ボランティアホリデー趣旨)であり、国や県をあげての広がりを見せています。(参考:NPO法人埼玉ツーリズム協議会 http://saitama-tourism.net/

こうした動きはニートや若年労働者の問題で就農支援、農業体験としても注目されています。先日、豊洲のショッピングセンターにオープンした「キッザニア」というスペインの「子どもの国」テーマパークは、各企業スポンサーが子ども達に各職業で働くことや給料をもらう、体験型の職業教育の場にもなっています。最近人気の修学旅行にもこうした就業や農業体験を取り入れたものやグリーンツーリズムがあげられています。農村や地域間の交流を通じて「地域を知る」という手法は、自分達の街を知る上でも大切な体験となるでしょう。市民に限らず子供たちにとってもコミュニティの再生にはうってつけの学習法がグリーンツーリズムだといえるかも知れません。

地域通貨を活用して桃との交換を行なった参加者

戸田市の友好姉妹都市交流


さて、戸田市においても友好姉妹都市である白河市大信地区(以前の大信村)をはじめとしていくつかの地方と地域間交流事業を行なっています。今回はその最近の動きをグリーンツーリズムの視点から特集してみました。
まず、この国内の友好姉妹都市との交流事業は20年近い歴史があり、皆さんもふるさと祭りや商工祭、コンパル祭りなどでブースやテントを張っての地場野菜などの即売を目にしたことがあるのではないでしょうか。どのイベントでも大信村に限らず伊豆や美里町などの新鮮な海産物、農産物が人気ですぐに売り切れになります。市民交歓として町会や議員さんとの野球、ゴルフコンペなどもあるようですが、コミュニティ推進課の大信への芋ほりなども年中行事になっています。
しかし、一方でせっかく遠方より来ながら市民同士の交流会やもっと深い関係を構築するアイデアに不足していたところもあります。そろそろもう一歩踏み込んだ交流をという要望が出始めそうな時期に来ているのが実態ではないでしょうか。

囲炉裏のある古民家の拠点「やっぺ屋」

高齢者の地域間交流モデル

その端緒になりそうな交流会が8月と9月に行なわれました。第1回目となる交流は「高齢者の健康作りと生きがい作りの会」(代表:水内啓之)が、市内の高齢者を中心に行政や議会レベルでない、市民レベルでの地域間交流のあり方をモデルに実施しましたので、以下にその報告書から一部を抜粋して掲載します。
「まず、『高齢者の健康作りと生きがい作りの会』は、友好姉妹都市である福島県の大信地区に合宿できる施設を作り、自宅や施設に閉じ込められがちな高齢者を定期的に宿泊させ、地元との交流や農業体験で健康で生きがいのある人生を送らせようという設立の目的を持っている。最終的には長期宿泊、農業従事などによる健康作りによりPPK(ピンピンコロリ)計画とも言われる、寝たきりの予防など、これからの高齢者の生き方を模索している。
今回、その試みとして福島県白河市大信地区の中新城に古民家を改装して蕎麦屋にもなっている施設「やっぺ屋」を借り入れた。この施設は宿泊用の部屋が3室、風呂、トイレの他に、囲炉裏のある食堂兼集会室と共同炊事が出来る炊事場が完備されている。今回のツアーには60代の男性2名、70代の男性1名、80代の女性3名と50代の男性の合計7名が参加した。
ここで1泊の共同生活を実施したが、参加者のうち80代の女性が普段では高齢者ゆえに家事の手伝いが少なくなっていた日常を離れて、自立的に掃除や炊事といった家事に取り組み、昔取った杵柄と生き生きと作業に従事していた。結果的に家では何もさせてもらえないというストレスの発散になったのではないだろうか。

8月7日(月)到着後、「やっぺ屋」のご主人の指導で蕎麦打ち体験、試食会を行なった。その後、白河市大信庁舎を表敬訪問。産業課の金沢課長に挨拶、夜の交流会にお招きすることになった。課長の呼びかけで、元村会議員の菅森さんをはじめ、戸田市の芋ほりで交流のある直売関係のご婦人が5名ほどがやっぺ屋へ集まり、市民交流会が催された。酒宴の前に、菅森さんより大信地区の地理的歴史的成り立ちなどのセミナーを1時間ほど拝聴し、戸田市との交流に至る経緯なども伺うことが出来た。
また、今回の交流会を契機に、市民レベルでのこうした交流やコミュニティ・ビジネスに発展するようなアイデアでの地域交流が企画できないか検討することになった。産業課としても「戸田農場」といった農業体験を継続的に行なえる施設や、戸田市内に空き店舗を利用した直売場や宿泊施設なども研究したいという話も出た。次回、戸田のふるさと祭りの時に来るというので、その際に、再度、交流ができればという話になった。

8月8日(火)午前4時半起床で、朝食後、農家の方に案内されて今年の長雨で戸田市の芋ほり行事が中止になってしまった農場で農作業の体験という形でじゃが芋ほりを行なった。昼食後、昨日の御礼に大信庁舎を訪れたところ、紹介セミナーで出たところを金沢課長が案内するというので、車2台に分乗して、旧会津街道沿いに町屋遺跡、冨澤館跡、聖ヶ岩などを見学した。
その後、次の宿泊施設でもある福島市飯坂温泉へ向けて出発。お土産の野菜類で車は満杯状態で、目的地の飯坂温泉「叶や」旅館に到着。温泉でのんびり疲れを癒した。ここは震災対策疎開先下見ツアーで宿泊したところで、大信地区と関連して、今後の地域間交流の候補地として確保したいところであり、翌日の計画にある桃の木のオーナー制度などを取り入れている。
翌8月9日(水)朝食後、近くの安斉果樹園を訪問。ここが桃の木のオーナー制度で確保したところで、全員で桃の収穫体験を行なった。1本の桃の木からおよそ400個の桃が収穫できるそうで、今回は半分の200個を収穫し、1人8個ずつを現物支給、その他は地域通貨などで販売。お土産に宅急便で送るなどし、残りは野菜と共に戸田に持ち帰ることになった。」


やっぺ屋到着

コミュニティビジネスとしての地域間交流


第2回目の交流会は、戸田ふるさと祭りに参加した農協や議員さん、大信庁舎の職員さんなどと戸田市の議員さんはじめ数人が蕨の居酒屋での飲み会となりました。
そして、3回目となるツーリングが去る9月24日から26日に行なわれました。今回は地域通貨「戸田オール」運営委員会が、地域通貨を地域間交流でどう使えるか、また、エコライフ活動のひとつとして「菜の花プロジェクト」の可能性も含めての調査が目的でした。前回までの交流を受けて、菜種油の栽培から搾油までを学習し、戸田農場で栽培して商品化することの可能性や「お米のオーナー制度」を創設して、田植えから刈り取りまでの農業体験、安全で安心の自分の田んぼからの収穫したお米を持ち帰るシステムを検討してはといった提案も出されました。また、市役所1階の産業展示コーナーや戸田駅中心にNPOが開設している「お休み処」などで農作物を地域通貨で販売する「交流市場」などの開設のアイデアも出てきました。今回はさらに障害者が参加することで、地域間交流のバリアフリー化の課題も見えてきました。閉じこもりがちなのは高齢者ばかりではありません。障害者にとってもグリーンツーリズムで農村や広々とした自然の中での体験、そのツアーを企画したり、あるいは「交流市場」での就労が、独自の働く場の確保にもなるのではないかと期待できるアイデアです。
菜種油に関しては当初後で述べますバイオマス燃料(軽油やガソリンの代替エネルギー)として活用できないかという問題意識でスタートしたのですが、大信産の菜種油は昔ながらの手絞り(式の機械による搾油)で、大手などの市販の油は見た目と経済性からその精製過程において化学薬品、添加物などを使用、触媒による100%搾油が可能なのに対して、およそ30%程度、多くても60%程度の搾油で、絞り粕に残留する油分が多く、大手業者が購入するほどであり、家畜や果物栽培の苗床などに活用できる程とのことでした。その結果、サラダ油や自作のマヨネーズ原料として安心、安全で身体に優しい健康食品として注目されつつある、ということでコストやそのよさから燃料にするにはもったいないという結論になりました。返って戸田との交流という独自ブランドで自然食品、健康食品として商品化することでコミュニティビジネスの可能性が広がるのではないでしょうか。

BDF燃料を補給する中島委員長と水内さん


BDF(バイオマス・ディーゼル燃料)とリサイクル事業

今回の調査には別にBDFといわれる燃料の課題を調べる目的もありました。最近、マスコミでも騒がれているのでご存知の方も多いかも知れませんが、産油国に対抗して南米の農業国がバイオのガソリン(トウモロコシやサトウキビからメチルアルコールを活用する)によって世界のエネルギー戦略と環境問題に挑戦しています。同じように今、ディーゼルエンジン用の燃料の軽油の代わりに、てんぷら油(菜種やひまわりなど植物性の油)を燃料にしようという動きが始まっています。これは軽油などの化石燃料に比べて黒鉛や硫化酸化物(SOx)を出さず、植物の生成から二酸化炭素(CO2)もマイナス計算となり、地球温暖化防止にも貢献するのです。その際、植物から直接搾油する「バージンオイル」と呼ばれる燃料と家庭や業者が使用した「てんぷら油」の廃食油リサイクルを活用するという二つの方法が考えられ、BDF(バイオマス・ディーゼル・フューエル)とかVBF(ベジタブル・ディーゼル・フューエル)などと呼ばれています。なぜ燃料が重要な問題なのか、その辺の事情を今回の報告書から抜粋しておきます。

「大信地区の特産物を戸田市に搬入する、あるいは戸田市民が大信地区へ訪れるというためには「交通手段」が重要な要素となる。後述することになるが、大信地区の直売施設を設置するにしても、そこで地域通貨を流通させるにしても、また、高齢者や障害者など市民を大信地区へ送迎するにしても、その交通手段とコストは検討しなければならない問題である。

同時にグリーン・ツーリズムは、エコ・ツーリズムでなければならず、環境に配慮している戸田市としては当然、避けては通れない課題がある。そのポイントが、交通手段における燃料であることは間違いがない。エコ・ツーリズムと言いながら大量の黒鉛やCO2を撒き散らしてのガソリンやディーゼル(軽油)燃料でのバスツアーでは本末転倒である。当然、公共交通手段である電車・列車という方法はあるが、今回にも見られるように、まずは制約の多い高齢者やより弱者優先での障害者を対象として、その可能性を探るとすれば、一般健常者市民でない場合を想定して、自動車やバスという交通手段のあり方を先に検討した。そこでこれからの交流事業の基本となるエコ・ツーリズムのためにBDF燃料の可能性を優先的調査目標とした。」

「戸田市においては、廃食油リサイクル活動としては、現在まで回収事業が行なわれていない。家庭からの「てんぷら廃食油」をどう活用できるか継続的に議論を行なうべきであろう。現在のところ、行政は全くタッチしない形での「BDF研究会」が細々と市民活動として継続しているのが実態である。てんぷら廃食油のリサイクル事業を成功させるためには、第1に分別回収という行政と市民活動の協働事業、第2に廃食油を燃料とし精製するプラント事業、そして、第3にそれを燃料として活用する事業、例えば公用車やコミュニティバス、農機具に利用するといった消費するまでの一貫した三位一体のサイクルが重要である。このことが実現すれば、まさに「家庭が油田」となり、現在の固めるコストやゴミとしての焼却費用という外部不経済からも、また黒鉛やCO2削減という地球温暖化防止など環境対策にも大いなる貢献が可能となるだろう。さらに、回収に協力する活動に地域通貨を活用し、市内での燃料供給も地域通貨を使うことでのサイクルができれば、それは地域内経済循環を実現することになり、地域通貨の本来の流通を加速することになる。その意味でも「てんぷら廃食油」のリサイクル事業は委員会としても取り組まなければならない重要な事業だと考える。

しかしながら、最近では南米の非産油国を中心としてトウモロコシやサトウキビなどからのメタノールガソリンの精製などバイオマス・エネルギーが話題になっており、植物油のディーゼル燃料も菜種の油を搾油した「バージンオイル」を燃料とする研究が行なわれている。てんぷら廃食油とバージンオイルとの大きな差は、プラントでの前処理、すなわち、廃食油に動物性油(バターやラードなど)やてんぷら粕などの不純物を取り除く処理などの面倒がない、リサイクル事業が栽培事業より手間がかかる、コスト高ではないかという意見が取り上げられている。もちろん、バイオマス燃料が化石燃料よりエンジンに悪いとか、そのデメリットを宣伝する勢力はあるが、その多くは偏見や誤解が多い。

そこで今回はとりあえずバージンオイルのコスト、技術面などを中心に、菜の花プロジェクトに関して、それの現実化を中心に調査、研究することにした。同時にグリーン・ツーリズムの観点から、菜の花の栽培を観光資源としても利用できるかを模索することにした。」

さてさて、グリーンツーリズムと市民活動の関係が少しは理解できましたでしょうか? 農村と都市が地域間で交流することで「エコライフ」や働く意義や意味を考える。子どもから高齢者までを巻き込み、コミュニティ再生を考える。子育てから安心、安全な食べ物、農業体験、その土地が持つ歴史や文化の理解、自然に触れ、その土地の人情に触れながら、あるときはのんびり温泉につかり心身ともに癒される旅。それがグリーンツーリズムと言えそうです。今、福島県の温泉旅館で地域通貨「戸田オール」が使えないか研究中です。借金だらけの公設の保養所を維持するより、サービスもいい、その地の活性化にも貢献する地域間交流の温泉宿との提携は、これからの市民農場と同じような市民温泉地の開発にも発展するかも知れません。そして、それが大震災のときの集団疎開先にもなるとしたら、まだまだグリーンツーリズムの研究は奥が深いのかも知れません。皆さんでいろいろなアイデアを出し合いませんか。(Y)
   
やっぺ屋に到着した第2陣              障害者に対応した旅館(バリアフリー対応施設)

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