9月の特集<No.2>

「指定管理者制度」と
「新しい公共経営」


 ◆もう公共施設の民営化は始まっています

 今回は、市民活動に関係する公共施設の運営についての特集です。最近、「PFI」とか「指定管理者制度」といった言葉を耳にしたことがないでしょうか。例えば、戸田市の広報誌やホームページでもつい最近、戸田市文化会館、スポーツセンター、児童センターなどが指定管理者を募集していました。埼玉県では61箇所の県営施設を民間に委託しようと同じく指定管理者を公募しています。
 つまり、行政改革のひとつとして、庶民感覚から槍玉に上げられる「お役所仕事」「官僚的」といった行政のサービス対応の悪さや非効率、経済的でないないところなどを、民間のノウハウやコスト削減の努力、民間活力を公的な施設の運営に積極的に取り入れよう という話です。同時に国レベルの「小さな政府」を目標に「地方(域)でできることは地方(域)で」「民間でできるところは民間で」させよう、という動きです。 この動きは、それぞれのアイデア次第で、住みやすい街、働き甲斐のある街づくりといった地域間競争ともなります。 いまや行政も選ばれる時代なのです。
 その具体的な表れとして法律を作ったり変えたりして、自治体が計画を立て業者を指名したり入札をするのではなく、計画から資金、建設、運営までを民間が行うというPFIPrivate Finance Initiative直訳すれば「民間財務主導」)や、既にある公共施設の管理・運営を民間に委託するという「指定管理者制度」などが考えられてきました。戸田市でも保健センターやこどもの国などがPFI方式 の検討を行なうようですが、今回は文化会館など4箇所の施設が指定管理者制度で公募されました。
 

◆民間ビジネスチャンスの指定管理者制度

 地方自治法の一部を改正する法律が平成15年6月に公布され、同年9月から施行されたことを受けて、地方自治体の公の施設にも、従来の管理委託制度に替わって指定管理者制度が適用さ れることとなり、戸田市もそれを採用しました。これからはどんどん公共施設が民間に委ねられます。従来は国・県や市の直営か、条例によって、よく役人の天下りで批判されるところの財団、特殊法人や外郭団体へ管理委託されていた公共施設が、民間に開放されることになった訳です。これは民間事業者にとっても「新しい公共事業」として今まで「官」が独占していた領域へ進出できる大きなビジネスチャンスにもなります。
 ですから、大手ゼネコンや企業は、新たに「指定管理者制度導入による市場はどの程度まで拡大するのか」「市場参入を有利に進める条件は何か」など、今までにない「新しい公共分野」新規市場創出を有利なビジネスチャンスとするための研究をしています。これまで公共が担ってきた事業領域において新規ビジネス(「パブリックビジネス」と定義)の開拓を意図する民間企業の「ニューパブリックサービス研究」が様々な形で広がっています。
 

◆公営が民間の経営になるだけなの?

 しかし、「指定管理者制度」とは、多様化する住民ニーズに、より効果的かつ効率的に対応するため、公の施設の管理に民間の能力を活用しつつ、住民サービスの向上を図るとともに、経費の削減等を図ることを目的としていますが、だから民間に任せればいいというだけでなく、公共の民営化のビジョン、地方法自治の「新しい公共経営」(New Public Management)のあり方や「住民参画」(Public Involvement)の方向、地元経済の活性化、自律化、大手からの下請け脱却、PPP( 「公共と民間がパートナーシップで協働する、官民協力」Pabulic Private Partnership)など、地方の暮らしや経済、社会、政治を考える契機となるものです。これらは長い「英国病」という不況に悩んだイギリスのマネジメント理論からの、政治・経済・社会問題のひとつであり、市民活動の原点になっています。
 つまり、従来の「官」だけでなく、単に「民間事業者」へというだけでもなく、民間にとってもその社会的貢献や企業の社会的責任を問いかける、第三の「市民・住民参画」の「プロシューマー(創造的消費者)」といった新しいものでなければならないはずです。今回制定された指定管理者制度では、営利企業のほか、社会福祉法人などの公益法人、特定非営利活動法人(NPO法人)及び法人格を持たない団体に対しても管理を行わせることができます。また、施設の利用料を指定管理者の収入とすることができるほか、利用の許可等、従来は民間企業が行うことができなかった行政の権限までも行わせることができることとなったのです。言い換えるならは、「営利」「非営利」といった壁がなくなりつつあるのです。そして一番重要なのは利用者である「市民」の意見、参加型の「モニタリング」といったニーズに常に継続的に改善される「サスティナブル(持続可能性)」のある経営、それこそ「市場性」に対応という自由・民主主義に他ならないわけであり、そうした公平性ある、官でも民でもない、新しいあり方が求められていることなのだという理解が大切なのです。 それは市民が主役ということだと思います。
 

◆市民パートナーとなる組織のあり方を問う

 だからこそ、市民活動団体がこの指定管理者制度に応募することも当然できる訳ですし、さらにここで公共サービスを受ける側である市民・住民としても、自分たちが参画して「公共」を変えていく一員であることの認識が大切になります。今までのように「要求」するだけの市民ではなく、パートナーとして一緒に運営していく気持ちが求められるのです。今までの公園や公共施設のように平気で木を折ったり落書きしたり汚したりできる市民では、この「新しい公共」は維持できないでしょう。市民一人ひとりが参加意識をもって、市民活動の認識を持って、次のこどもたちの未来に残していける環境として「継続的」な地域「経営」がなされなければなりません。だから官民協働事業という形なのです。環境や福祉、教育・子育て、ニートの問題など少子高齢化も待ったなしの状況です。これらの課題を解決する方法は数少ないのだと思います。
 こうした視点がこの指定管理者制度を支える人たち、言い換えるなら応募する事業者や選考する行政の委員、利用し参加する市民のそれぞれが共有できなければならないのではないでしょうか。「新しい公共」は与えられるものではなく、自分たちで創り上げなければならないものだと考えます。その意味でも、市民活動をいかに発展させ活発化させるか、このサイトの重要性も出てくるのだと思います。また「市民」という言葉には、そこに住む「住民」だけでなく「企業市民」や「行政職員」「市会議員」「こどもたち」などもふくめた「新しい公共」を共有する人々という広がりが出てきます。

◆終わりに

 ちょっと難しい話になってしまったでしょうか。この特集では、こうした堅い話と、市民活動の地域情報を交互に掲載していきたいと考えています。今回は少し理屈っぽい特集になってしまいましたがご容赦ください。あるいは物足りないとお感じの方もいらっしゃるかもしれません。
 そうした方には、現在、こうした指定管理者制度を勉強する「戸田市PPP研究会」なるものがあります。もっと詳しくお知りになりたい方、一緒に勉強したい方は一度事務局にご連絡ください。メーリングリストもあります。

 また、この特集欄に対するご意見もどしどしお寄せください。反論なども掲示板にお寄せください。そして、市民活動が少しでも活性化するよう期待しています。特集は毎月1回更新する予定です。(Y)