戸田市ボランティア・市民活動支援センターホームページ TOMATO戸田市ボランティア・市民活動支援センター特集環境・みどり環境・みどり特集No.29≪最近の戸田ボートコース≫(H31/02/28)

環境・みどり特集No.29≪最近の戸田ボートコース≫(H31/02/28)

公開日:2019年02月28日 最終更新日:2022年11月30日

戸田ボートコースは、昭和39年の東京オリンピックに使用された漕艇場で、年間を通してボート競技が開催されています。
 戸田ボートコースは、昭和39年の東京オリンピックに使用された漕艇場で、年間を通してボート競技が開催されています。コース東側周辺には国や県、企業や大学などの艇庫が多く並び、日本ボート競技のメッカとなっています。
 最初は、1940年開催予定だった第12回東京オリンピックのボート競技会場と荒川の治水対策のために建設されました。第18回東京オリンピックでの使用に際して改修工事が行われ、オリンピック開催後は周辺施設を含めて埼玉県営戸田公園として開設されました。ボートコースの水は、荒川から笹目川を経由して導入され、改修工事以後は全面的な入れ替えは行われていません。

●突然発生した水草
 このところボートコースの水がきれいになり、透明感が増したように感じられます。例年は薄茶色に濁り、夏過ぎには所々でアオコの発生が発生していましたが、このごろはアオコも姿を消したようです。
 最初に異変に気付いたのは2017年の6月でした。イオンチアーズクラブの子供たちとの水質調査で、透明度が高く濁度は1度以下(例年は5度以上)でしたので、水道水を測定したのかと疑ったほどでした。
 そこでボートコースに行ってみると、確かに水の透明度は高く、今まで目にしたことのない水草のちぎれたかたまりが岸辺にたくさん浮いていました。そして、コース脇には引き上げられた水草があちこちに積み上げられ、場所によっては小山のように盛り上げられていました。
 水草が繁殖するということは、水質も良くなったということだし、目くじらを立てるほどのことでもないのですが、ボートコースでとなると「良かった、良かった」で済まない事情も出てきます。
●厄介者の水草
 戸田ボートコースはボート競技用の施設です。多少の水草であれば、ボート競技に支障はないのでしょうが、量が多くなってくると問題が起きてきます。ボートの進行の妨げになるばかりでなく、オールや舵に絡みつき、転覆の危険も出てきます。

●水草の除去
 そこで、ボートコースを管理する県や競技を主宰する日本ボート協会では、大きな大会の前には水草を除去して大会の運営に支障の出ないようにしました。前方にバリカンのようなカッターを付けた刈取り船で邪魔な水草を刈り取ります。刈り取った水草はコンベアで後方から取り出し、ボートに積み替えて岸まで運びます。岸に運ばれた水草はゴミ運搬車で蕨戸田衛生センターに運ばれて焼却処分されるそうで、多い時には1日に10トン以上の水草を刈り取り、処分していたそうです。刈取り船は2017年には1台でしたが、2018年は2台で運用していました。

●水草の正体
 2017年から急に増え出した水草ですが、注意深く見てみると1種類だけではないようです。最初に増えたのは外来種のカナダモでした。大会ごとの刈取りと大学のボート部員たちの努力で、2017年の冬場には姿を消したように見えました。
 ところが2018年の春になると再び姿を見せるようになり、4月には前年の夏以上の勢いで増え始め、カナダモに変わってエビモが主体となっていました。さらに夏過ぎにはカナダモが復活し、在来種であるマツモやフサモなども混じるようになりました。このような状況と対策を県の担当部署に相談したところ
 ①水草が大発生しているのは水質が良い証し
 ②水草の種類が変わることはあり得る
 ③侵入経路は特定できない
 ということで、残念ながら対応策の目途は立ちませんでした。
 2018年10月に「県立川の博物館」学芸員の方に同行いただき、実地調査を行いました。 学芸員の方の話では、水草の異常増殖は方々で問題となっているが、都心近くの戸田ボートコースでマツモやフサモが増殖しているのは興味深い、とのことでした。さらに、マツモは埼玉県の絶滅危惧種に、フサモは準絶滅危惧種に指定されていることも新たな情報として頂きました。

●豊かになった生態系
 水草が大量に増殖して水の透明度が高くなると、魚もはっきりと見られるようになってきました。外来種も多いようですが、ちぎれて漂っている水草の周りを多くの魚が泳ぎ回っています。水草に付着した水棲生物や水草を食べに来ているようです。気のせいか、冬に飛来する水鳥の数も増えたようです。
 厄介者と思われた水草の中に、ボートコースでは姿を消していたと思われたマツモやフサモが見いだせたのは驚きでした。一昔前の豊かな生態系の一部が戻ってきたようですが、ボート競技の邪魔になるのも困りものです。

●今後の対応
 ボートコースは戸田市にとってシンボル的存在ですが、競技者向けの施設ということで一般市民には取っ付き難い感も否めず、残念ながら「憩いの場」との認識はいまいちといった感じです。
「戸田の川を考える会」では、機関紙「さくら草」で2017年6月からボートコースの水草について状況報告と対応策の問題提起を行ってきました。また、管理主管である県都市整備部の公園スタジアム課に対して地域住民としてボートコースの環境改善要求を行うとともに、戸田市の関連部署に連携を呼び掛けてきました。さらに、昨年12月には戸田市長にあて環境改善に係る要望を提出しました。突然現れた厄介者の水草ですが、「競技者向けの施設」と「市民の憩いの場」を両立させるシンボル的役割を果たしてもらい、地域での一致した考え・方向性・風土を醸成していこうと思っております。
 戸田ボートコースにいったんは消えてしまった絶滅危惧種が生育したということは驚きでもありますが、それだけ水質が良くなってきたということです。このような環境を身近に感じられる戸田市民として、「何ができるのか」、「何をすべきなのか」、真剣に考える時ではないでしょうか。

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【 文責:『NPO法人戸田の川を考える会』長谷川 孝雄】
  問合せ:戸田市ボランティア・市民活動支援センター
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 掲載:TOMATOホームページ事務局(校正M.Y/編集S.Y)(2019/02/28)

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